就職氷河期世代の私がたどり着いた「人生の冗長設計」6つの柱

2026年9月22日生き方・働き方

人生は、計画通りには進みません。

そんなことは当たり前だと言われれば、その通りです。

しかし、私たちは学校を卒業し、会社に入り、仕事を覚え、収入を増やし、家庭を持ち、老後に備える…

という、どこか一本の線の上に人生が続いていくことを前提に考えがちです。

私自身も若い頃は、そうだったように思います。

ところが、私が社会へ出た時代は就職氷河期でした。

入口から、予定通りにはいきませんでした。

仕事を始めてからも、転職、独立、病気、法人経営、不動産、家族、自分自身の年齢の変化など、さまざまな出来事がありました。

振り返ってみると、人生というものは、精密な長期計画を作り、その通りに進めるプロジェクトではなかったのだと思います。

だから私は、いつからか「未来を正確に予測すること」よりも、予測が外れても止まらない構造を作ることを重視するようになりました。

それを私は「人生の冗長設計」と呼んでいます。

就職氷河期世代は「前提が崩れること」から始まった

私たち就職氷河期世代は、少し特殊な経験をしています。

一生懸命勉強して、大学へ進学して、就職活動をすれば、それなりの会社に入れる。

そんな前提が大きく崩れた時代に、社会へ出ました。

本人の能力や努力とは別に、卒業した年によって求人環境が大きく違う。

これは、自分ではコントロールできません。

その後も、景気、会社の業績、人事、病気、家族の事情、物価、金利、社会制度…

など、自分では決められないものが人生には次々と登場します。

それなのに、

「この会社で定年まで働く」
「この収入が続く」
「健康で働き続けられる」
「この制度が続く」

という一つの前提だけで人生を組み立てるのは、考えてみればかなり危ういことです。

私は需要予測や販売計画、S&OPといった仕事に長く携わってきました。

企業の世界でも、予測は必ず外れます。

だから企業は、予測精度を高めるだけではなく、在庫を持ったり、余裕能力を持ったり、調達先を複数にしたりして、予想外の事態に備えます。

それなら人生にも、同じ考え方を持ち込めるのではないか。

そこから整理していったのが、人生の冗長設計です。

私の場合、その考え方は大きく六つの柱に分かれています。

 

 

 

 

 

 

①制御可能性:自分で動かせるものに集中する

一つ目は、制御可能性です。

景気を変えることはできません。

会社の経営方針も、他人の考え方も、自分では決められません。

しかし、自分がどれだけ生活費を使うのか、何を学ぶのか、どんな仕事を選ぶのか、どの程度働くのか、いくつの選択肢を用意するのか。

こちらには、自分で動かせる部分があります。

未来そのものを制御することはできません。

しかし、未来に対してどのような構えを作るかは制御できる。

人生の冗長設計では、まずここを分けて考えます。

どうにもならないものを何とかしようとするより、自分で変えられる部分を少しずつ増やしていく。

私にとっての「自由」は、何もしなくてよい状態というより、自分で選択できる範囲が広い状態に近いのだと思います。

②余白:100%使い切らない

二つ目は、余白です。

これは私の人生設計の中でも、かなり重要な考え方です。

企業では、設備を常に100%稼働させることが必ずしも最適とは限りません。

一見すると効率的ですが、何かトラブルが起きた瞬間、対応する余力がありません。

人間も同じだと思っています。

予定を100%入れる。

収入を100%使う。

借りられるだけ借りる。

働けるだけ働く。

短期的には効率がよく見えます。

しかし、何か一つ想定外のことが起きると、一気に苦しくなります。

だから、時間にも、お金にも、仕事にも、ある程度の余白を残す。

余白は無駄ではなく、変化へ対応するための余裕能力です。

最新版の「人生の冗長設計」でも、週3日ワークはこの「余裕能力」を働き方へ実装した一つの形として位置づけています。

③複線化:一つが止まっても人生を止めない

三つ目は、複線化です。

一つの会社。一つの仕事。一つの収入源。一つの資産。一つの専門分野。

一本足打法にすれば効率はよくなります。

しかし、その一本が止まれば、全体が止まります。

だから私は、何でも一本にまとめることを必ずしも最適だとは考えていません。

仕事を複線化する。収入源を複線化する。資産を複線化する。知識やスキルを複線化する。

もちろん、何でも増やせばよいわけではありません。

管理できないほど増やしてしまえば、今度は複雑性がリスクになります。

大切なのは、一本が使えなくなったときに、別の線へ乗り換えられることです。

これは収入を最大化するためというより、人生そのものを止めないための設計です。

④時間:短期の最適解だけで判断しない

四つ目は、時間です。

人生では、今日の時点だけを切り取れば非効率に見えることがあります。

勉強しても、すぐには収入にならない。

小さな事業を作っても、最初はほとんど利益が出ない。

資産形成も、短期間では大きく変わりません。

しかし、5年、10年、20年という時間を加えると、景色が変わることがあります。

私は、投資でよく使われる「長期・分散・積立」という考え方は、人生にもかなり応用できると思っています。

一発で人生を変えようとしない。

少しずつ選択肢を増やす。

小さな仕組みを作る。

そして時間を味方につける。

就職氷河期のようにスタート地点が思い通りにならなかったとしても、人生全体までその時点で決まるわけではありません。

短期では不利でも、時間軸を長く取れば設計を変更できる。

これも、私が50代になって強く感じることです。

⑤器:個人の頑張りだけで解決しない

五つ目は、器です。

人生をすべて「自分自身の頑張り」で支えようとすると、限界があります。

そこで、仕組みを使います。

法人という器。社会保険という仕組み。金融資産。不動産。契約。税制。外部の専門家。

制度にはそれぞれ目的があり、メリットもデメリットもあります。

重要なのは、制度を使うこと自体ではありません。

自分一人の体力や労働力だけに依存しない構造を作ることです。

若い頃は、自分が頑張れば何とかなると思えるかもしれません。

しかし年齢を重ねるほど、「自分自身」もまた永遠に安定稼働する装置ではないことが分かってきます。

だから、自分を支えてくれる器を少しずつ育てていく。

これも冗長設計の一部です。

⑥実装:考え方だけでは人生は変わらない

そして六つ目が、実装です。

これは意外と重要です。

どれだけきれいな人生論を作っても、現実に何も変わらなければ意味がありません。

働き方を変える。資格を取る。法人を作る。資産を持つ。固定費を下げる。仕事を減らす。AIを使う。外部へ任せる。実際に小さく動かしてみる。うまくいかなければ、また変える。

私自身の人生も、最初から現在の形を設計していたわけではありません。

試して、失敗して、修正してきただけです。

だから実装には「完成」がありません。

計画して、動いて、確認して、また設計を変える。

人生そのものを、長いPDCAサイクルのように更新し続けていくイメージです。

六本目に実装を置いているのは、人生の冗長設計を単なる思想で終わらせないためでもあります。

六つの柱は、それぞれ独立しているわけではない

ここまで六つに分けて説明しましたが、実際の人生では、それぞれがきれいに分離しているわけではありません。

たとえば働く日数を減らす。

これは「余白」です。

しかし、収入源を複数持っているから減らせるのであれば「複線化」でもあります。

法人や資産が支えているなら「器」でもあります。

長い時間をかけてその状態を作ったのであれば「時間」も関係します。

そして実際に稼働率を変更するのは「実装」です。

すべてを通じて、自分で選択できる範囲を増やしているという意味では「制御可能性」に戻ってきます。

つまり六本の柱は、六つの別々のノウハウではありません。

人生を壊れにくくするために、同じ構造を六つの方向から見ていると考えた方が近いでしょう。

詳しい内容については、私がこれまで試してきたことをまとめた「人生の冗長設計」紹介ページに整理しています。

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アダプテーションFIREも、人生の冗長設計の一つの実装

最近、私は自分の現在の働き方を説明する言葉として、「アダプテーションFIRE」という言葉を使っています。

完全FIREして、二度と働かないことを目標にするわけではありません。

かといって、常に週5日、100%の力で働き続けることを前提にするわけでもありません。

仕事がある。体調もいい。働きたい。そんなときには稼働率を上げればいい。

反対に、体調、家族、仕事、年齢などの環境が変われば、稼働率を下げてもいい。

週3日という数字に固定する必要もありません。

環境に合わせて、自分で働く量を変えられること。

私はその状態をアダプテーションFIREと呼んでいます。

これは新しいFIREの分類を作ること自体が目的ではありません。

考えてみれば、人生の冗長設計でいう6つの柱、

制御可能性、余白、複線化、時間、器、実装

を働き方の領域に落とし込んだ結果、そのような形になっただけです。

→ アダプテーションFIREとは?

人生は予測できない。だから設計する

20代の頃、現在の自分の姿を予測できたかと聞かれれば、まったくできません。

就職氷河期に社会へ出た時点では、その先に何があるのかも分かりませんでした。

その後も、予定外のことはいくつも起こりました。

おそらく、これからも起こるでしょう。

だから私は、完璧な人生計画を作ることには、それほど意味を感じなくなりました。

必要なのは、未来を当てることではない。

外れたときに動けることです。

自分で動かせる部分を増やす。

余白を残す。

一つに依存しない。

時間を味方につける。

自分を支える器を作る。

そして、小さく実装しながら何度でも作り直す。

未来が分からないから何もできないのではありません。

未来が分からないからこそ、壊れにくい構造を作っておく。

それが、就職氷河期から、いろいろな回り道をしてきた私が、今のところたどり着いている「人生の冗長設計」なのです。

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原本:就職氷河期世代の私がたどり着いた「人生の冗長設計」6つの柱